側坐核前頭葉が活性化していて、島皮質が沈黙しているときは、購買から得られる喜びのほうがお金を払うことからくる痛みより大きいと脳が判断しているということです。
つまり、消費者は快・不快の感情で購買するかしないかを決めているのです。快を生む側坐核も不快を生む島皮質も古いのうである大脳周縁系に属しています。購買決定には論理的に思考をする新皮質の前頭葉の影響力は余りないようです。
価格が高すぎると思うと、痛みや不快を感じる島皮質が活性化することは、多くの実験によって証明されています。が、安い価格の場合に脳のどこかが快感を感じるという実験結果は見当たりません。そういう実験結果があったとしても、快を感じる報酬系の刺激を受ける場所である側坐核が含まれている線条体は、新しい刺激に慣れてくると活性度が落ちることがわかっています。つまり、低価格に慣れてしまった顧客の購買意欲を増大するためには、もっと安くしなければいけないということになります。
もっと、もっと……と顧客の要求は高くなるばかりです。最後には、顧客の購買意欲を刺激するために無料にしなくてはいけなくなってしまうことでしょう。

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