江戸の坂東京の坂 (中公文庫 よ 1-1)

江戸時代には、坂は唯一の江戸市街地の目標であった。ことに、大火においては、この坂を目標にして大火の位置や様子を説明したものである。たとえば目黒の行人坂から出火して、本郷菊坂から千駄木の団子坂辺りを焼きつくし、谷中本村りうあん坂にいたって、ようよう鎮火したというように、江戸市中が大火になるとその焼け跡にくっきりと、遠くからでも見えるものは、道路上においては、火事には焼けない坂みちだけであった。